メガネをかけなくても、遠方と近方の両方を見ることができる遠近両用眼内レンズである「多焦点眼内レンズ」。主に白内障の治療(手術)の際に使用されます。
多焦点眼内レンズは、2007年に厚生労働省の承認を受け、2008年に先進医療として承認されたレンズです。
白内障の治療では、濁った水晶体を取り出し、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。
多焦点眼内レンズが承認される前は、単焦点眼内レンズと呼ばれるレンズが治療に使われていたのですが、多焦点眼内レンズが承認されてからは、どちらのタイプの眼内レンズを使うのか選ぶことができるようになり、治療の選択肢が増えました。
単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズでは、ピントを合わせることができるポイントの数に違いがあります。単焦点眼内レンズでは、ある1点にしかピントを合わせることができませんが、多焦点眼内レンズでは遠方と近方の2点にピントを合わせることができるのです。
1点にしかピントを合わせることができない単焦点眼内レンズでは、近くにピントを合わせた場合は遠くが見えず、遠くにピントを合わせた場合は近くが見えないという状況に陥ります。そのため、ピントが合わない場所を見る時には、その都度メガネをかけなければなりません。若い頃のように自分が見たいと思った場所をスムーズに見るわけにはいきません。
その点、多焦点眼内レンズでは、遠方も近方も両方にピントを合わせることができます。その都度メガネをかける必要はありません。ただし、見え方に関しては、若い頃のように遠方も近方もスッキリくっきり見えるというわけではありません。メガネをかけるほどではないけれど、若い頃に比べるとどことなくぼんやりした見え方だな、という印象を持つ人が多いようです。
それでも、いちいちメガネをつけたりはずしたりしなくても良いというのはとても便利です。スポーツをしている人やメガネに抵抗がある人などは、多焦点眼レンズの使用は特におすすめです。